ストーキングのコツとは?
魚に気づかれないように、木に化ける。岩に化ける。そんな配慮をしながらポイントに近づいていくのがストーキングです。シチュエーションとしては「クリアウォーター」であるほど、そして「渇水」であればあるほど、ストーキングの釣りとなります。手前がヒラキになっている淵などのカタの部分、ここはカガミと呼ばれます。魚が着くポイントであると同時に、ここに不用意に近づくと一気に上流側へと走られてしまう厄介な場所と言えるでしょう。とくにこのポイントを刺激しないように、できるだけ遠回りしてキャストするという配慮が必要です。心に余裕を持つ必要があります。クマ鈴の音が魚を散らしてしまうのではないか、という声もありますが、これは川が流れる音でかき消されしまうのではないでしょうか。ですので、しっかりクマ鈴は身につけ、安全第一に釣りを心がけましょう。ポイントとの間合いの詰め方もなるべく前傾姿勢で、そしてモーションの大きなキャストを避け、可能な限りコンパクトなキャストで的確に狙っていくこともストーキングの一部だと思います。
ハイプレッシャー下での有効なアクションとは?
毎年テクニックが更新されていくミノーイングですが、最近の流行では「ボトミング」。要するに底を意識したテクニックです。魚の目線の遥か上での誘いではいったんプレッシャーのかかった魚は見向きもしないです。そんな時に有効なのが底にへばりついた魚の目の前でルアーを見せてやるテクニックです。目一杯大きなジャーキングで誘うというやり方です。流れにラインをとられないようにミノーを底まで落とし、そこから大きくシャクリを上げます。この時気をつけたいのがしっかりミノーが水を噛むようにしてやることです。しっかり水を捉えたミノーは初速はあるものの、移動距離は少なくしっかり魚を誘ってくれます。その時にラインの抵抗をうまく使うとさらに有効に魚を誘うことができます。ただ大きなジャークばかりでは単調になってしまうので底を這うようにゆっくり誘うこともします。
警戒心の高い魚はどんな所に着いているのか?
まず魚の着き場はセオリーからしるのが大事だと思います。体力のない春の魚は流速が遅めの深いトロ場に着き、初夏~夏の体力のある魚はひとつの瀬・淵というセットの中でも全面的に散らばる傾向があります。さらに水温が上がり、太陽光が強くなる盛夏は落ち込み直下の酸素の多い所、さらには日陰部分となるシェードに潜むことが多いです。ひと言で表現できないのが秋です。落ち込みの下やベタ底、ヒラキのカタの部分など、魚が着く場所は限定的でありながら、遡上する魚たちがいるので、それは河川や状況別に異なります。このようなある程度のセオリーを把握したうえで「警戒心の高い魚」を絞っていくと分かりやすいかもしれません。本州の渓流は年々ミノーに対するプレッシャーが高まっていると感じています。とくに人気河川では、人為的なプレッシャーが強くかかっているので、季節ごとの魚本来の着き場ではなく、外敵から身を隠しやすい消極的な着き場になる傾向があると思います。攻める河川の中で外敵から見つかりにくい場所をイメージすることが重要になるでしょう。それは大淵の奥深くのボトムであったり、波立つような流れの中の岩などの障害物周りです。あるいは深いボサの中やオーバーハングの下など、植物の葉・根周りと考えてもいいでしょう。
警戒心の高い魚へのアプローチは?
ルアーの着水地点は魚の目線の前に設定するのが基本です。ここで、自分の立ち位置が魚に対して下流側にあるのか、上流側にあるのかによっても異なりまが、一番意識するのは「できる限りラインを魚に見せないようにする」ということです。川の流れを見て、まず魚の着き場を想定し、ラインが魚の目の前に流れないようなルアーの軌道をとれるポジションにキャストします。とくにクロスストリームの攻めではロッドの角度、ラインメンディングによる調整で、ミノーのみを魚の着き場(イメージの着き場)に送り込んでいくことも可能です。しかし、やはり渓流では常にクロス方向から攻められるわけではなく、釣り上がりが基本になります。魚の斜め後方からアップクロス気味のキャストで攻めるのがメインになるでしょう。直のアップストリームで魚の真上をラインが走ってしまうことはなるべく避け、ラインは魚よりも手前側、自分の方にくるように工夫してください。
マヅメを攻めるのは大事なことなのか?
釣り人や鳥類などによるプレッシャーと共に、魚の活性は水温や美干支の動きと密接に関わっていると思います。とくに暗い時間帯である朝夕マヅメはプレッシャーと水温が下がる傾向にありますので、盛期の渓流魚たちは高活性になる。確かに狙い目です。ただ、渓流の規模によってマヅメの有効性は考えなくてはなりません。細渓流や山岳渓流の場合、「川通し」で釣り上がるため、先行者が入ってしまうとプレッシャーが大きくかかってしまい、時間帯の如何を問わず釣果が出にくくなります。またエサやフライと比較してアクションによる「アピール」で釣るルアーは、日中でもそこそこは魚の反応を見ることができます。そこで、規模の小さい渓流域ではマヅメよりも人為的プレッシャーを避けることが優先になるでしょう。開けた渓相の渓流や本流は水温によるインパクトを受けやすいので、活性の高い朝マヅメを狙うのは非常に有効です。上流域よりもベイトフィッシュが多く、また朝にはベイトフィッシュも盛んに動くため、はずせない時間帯なのです。しかし、遡上魚のサクラマスや放流魚のニジマスが対象魚になる場合は、マヅメだけが有効とも言い切れません。トラウトフィッシングは奥が深いです。ルアーフィッシングはまず魚に気づいてもらうところから始まるため、ミノーを暴れさせるアクションはよく使われますが、マヅメはベイトフィッシュが泳ぐ様を演出するようにナチュラルに攻めることがベターです。また、ヤマメは水生昆虫を捕食することの多い魚ですので、とくに夕マヅメは圧倒的にフライに分があります。フライよりも顕著にシルエットの大きいルアーフィッシングは、とくに朝マヅメを大事にすると良いでしょう。
ひとつのポイントをどのように攻めれば良いのか?
これはポイントの規模によるところが大きいと思います。まずカタの部分を狙って魚を釣る、もしくはひとつ下のポイントにカタの魚を落とすことで、淵のトップの部分に入っている魚を驚かさない。これがセオリーとされています。しかし、ポイントの規模や形状によっては、その1キャストによってカタの少し上流側に着いている魚が一気に上流側へと走ってしまうケースもあります。いい魚を狙うとなれば、淵頭の部分にロングキャストで一発で入れるのがベターです。そこから、さらに立ち位置を上流側に移動し、淵の部分をレーンを変えながら攻め直します。ただ、しつこいかもしれませんが、キャストは状況によって異なるものです。淵と呼ばれるポイントでも淵全体の流れにパワーがある「流れの押しが強い」場合、また、釣り人が4、5日くらい入っていない渓流と思われる場合、魚のプレッシャーが少しリセットされ、魚の状態がフレッシュに近い状態になります。そういった場合、カタの部分に驚くような大型が着いていることもよくあります。そのような時はとくに不用意に近づかず、カタから攻めるのが重要になるのではないでしょうか。
魚が食う間とはどういうタイミングなのか?
食わせるのが難しいアップストリームの釣りではこれは気になる点でしょう。規模の小さい小渓流ではアップ・アップクロスで狙っていく場合、例えば、落ち込み~カタまでの長さが4mほどの淵で一発のキャスト&リトリーブで食わせる必要があります。トゥイッチングによる純粋なアクション時、またミノーをターンさせた時にルアーにバイトしてくる魚は活性の高い魚と考えていいと思います。ルアーのターンは魚にスイッチを入れるひとつの間ということを覚えておいてほしいです。しかし、このような動かし方では口を使ってくれない魚がいます。そこでトゥイッチングの間にポウズを入れるなどして瞬間的にルアーを止めスピードやほんのわずかなレンジの差によって食わせるパターンがあります。また、ヒラを打っているルアーの食い切らない魚の場合、止めるのではなく高速リトリーブする。つまり、ただ巻きで見せることによってバイトする魚もいます。いずれも、魚の食う間はその時々によって変化しますから、自分の釣りの経験値を上げる中で、オリジナル理論を作っていてほしいと思います。
ルアーのドリフトとはどんなテクニックなのか?
上流に向けて投げたルアーは当然下流に流れてくるものですが、できるだけ自然にルアーを流下させること。これをドリフトと呼んでいます。ルアー、例えばシンキングミノーを魚たちのエサとして見立て、魚の捕食本能に訴えるように自然に流下させることを総称しているわけですが、その中でルアーにどういう動きをさせるのかが大事なってきます。ドリフトはラインをフリーにして流していく場合もありますが、状況に応じてトゥイッチやフォールを織り交ぜながら下流に流していくこともあります。水深や流れの強さを見ながら下流に流していくこともあります。水深や流れの強さを見ながら、沈めた方がいい場面、動かす方がいい場面を考えて、その具合を判断したいですね。しかし、ルアーはフライと違ってそれ自体は虫や小魚のイミテーションになっているわけではありません。そこでターンさせるのが大事になってきます。上流から流れてきたものが反転して当然別の動きになる。それは意図的に行ったり自然とすなったりするんですが、このターンは魚が反射的に口を使ってしまう要素になると考えられます。食性でみせつつ、反射で食わせる。こういったイメージです。でも、まったく的外れな所でターンしても意味は無いので「魚の目の前でターンすること」がより効果をもたらすはずです。魚を興奮させて追わせるのではなく、魚の定位している所を想定し流しこんでいってターンさせる。ドリフトはターンと1セットにするといいでしょう。ルアーはほぼ反射(リアクション)による釣りだと思いますが、流し方にナチュラルさとアピールを織り交ぜるのはとても有効だと思います。
ルアーのダウンでの効果的な攻め方とは?
渓流釣りのルール・マナーは「釣り上がっていくこと」が基本ですので、ビギナーの方は覚えておいてほしいと思います。対して、川幅の広い本流域は「釣り下がっていく」のが基本になるでしょう。いったんアップ狙ったものの思うような反応が得られない場合、もしくは、まだ反応しにくい魚が残っていると感じた場合。渓流では、そんな時に数キャストはど「攻め直す」イメージでダウンの攻めを行うのがよいと思います。先にアップで攻めている場合、いたと思われる魚を攻め直すのは実は難しいものです。川の中を歩く音はかなり反響するものですので、上流側へ回り込む際のアプローチには気を遣ってほしいと思います。ダウンで攻める際、手前側に白泡が立つようなポイントであれば、また流速の速い場所であるほど、魚の警戒心は低くなると考えています。魚が潜んでいると思われる場所を、投げる時も、さらにピックアップ時もよく観察してください。ルアーはアップ・アップクロスの釣りに比べて派手に動かす必要はありません。魚の着き場でステイさせつつ、シェイキングなどで若干ルアーにイレギュラーアクションを入れてアピールする。そんなスローな釣りが有効になるでしょう。
ルアーのウエイトに配慮したキャスティングとは?
ラインの自重を利用しながらループを使って送り込んでいくフライフィッシングと比較すると、ルアーのキャストは1回の振り抜きで決めなければならないため、かなりコツが必要になると言えるでしょう。ヘビーシンキングミノーやスプーンなどはボディが小さくともウエイトがあるので、遠くへ飛ばすことが容易なルアーです。しかし、一日の釣りの中で様々なルアーを使い分ける場合、キャストに乱れが生じやすいのは確かです。例えばヘビーシンキングミノーを投げた後、ルアーをフローティングミノーにチェンジした場合などはその傾向が顕著に表れます。リリースポイントを間違え、岩などにぶつけてしまうこともあります。ですが、フローティングミノーは軽いから飛ばないのではなく、ロッドのリリースポイントや反発力を活かして切れば、かなり遠くまで飛ばせることを意識してほしいです。ロッドを振り抜く速度やリリースポイントの把握に努めましょう。フローティングミノーに向いた軟らかいロッドではフローティングはヘビーシンキングを投げにくく、ヘビーシンキングミノー向きの硬いロッドではフローティングは投げにくい。こういう現象はあると思います。そこで、どんな重さのルアーでも比較的投げやすい。リリースポイントを把握しやすい適度なバランスを持ったロッドを選ぶことも重要です。また、どんなポイントであれショートキャストになってしまうよりはロング気味に飛ばすことを意識しましょう。オーバーになってしまってもフェザーリングによって、狙う場所に落とすことは可能だからです。また、対岸にボサや樹木などがない場合は、一度岸まで乗せてから水の中に落とすキャストの方法も全然アリです。
キャスティングはどんな種類を覚えれば良いのか?
渓流では様々な方向からルアーを射出できるのがベストです。その理由は「障害物の多さ」とルアーを投げ入れる「弾道」にあります。頭上が開けており投げるのがラクな流域では、オーバーヘッドキャストのみで十分に攻略できるでしょう。飛距離も出しやすく魚種を問わずに使われる手法なので、これが一番投げやすいという人も多いと思います。しかし、渓流は常に障害物との戦いであり、また障害物周りを攻略することが釣果を分けるフィールドです。オーバーヘッドキャストは頭上を樹木で覆われている場合には使えないことが多く、ルアーが飛んでいく弾道が高くなりがち。例えば、枝が覆い被さっている下の流れに低い弾道で投げ入れたい、またブッシュの間の小さなスポットの中心に打ち込みたい、など河川の規模や攻略条件がタイトになっていくにつれ、横方向のキャスティングに必要性を感じることでしょう。サイドとバックハンド、これは簡単に言えば左右のどちらかから投げることを意味しています。キャスト時、左右どちらかに障害物がある場合、サイド&バックハンドキャストをマスターしていれば、まず立ち位置を変えることなくポイントを打つことができます。主にこれら3種のキャストを覚えておくことは、フィールドで大きなアドバンテージとなります。
レーンを意識する釣りは重要なのか?
選択したレンジを有効に活かすために、具体的にはある程度一定のレンジをキープしてバイトに持ち込むには、流すラインを併せて考えなくてはなりません。このラインをここではレーンと呼ぶと理解していただいた上で話を進めますと、レーンを考える際には、水流の強弱や大小いくつもの筋、そこから発生する反転流など、複雑な流れを読み取ることが大事です。岩など障害物の有無、水深、両岸のカケアガリやカタなどの環境、これらの要素も重要なポイントです。これらの情報から縦のレンジ、横のレーンと組み合わせることで複合的・立体的に水中を理解できるようになるはずです。ルアーをひと流ししてみて反応が得られない場合は、まずは立ち位置を変えずにレーンに対して変化をつけてみるのはよくある手で、もちろん有効でしょう。ただ実際の渓流において、ひとつの立ち位置に対して流しやすいレーンはそう多くは存在しないものです。ここで無理をしてキャストを続けているとキャストミスや根掛かりを誘発しやすいだけでなく、スレにも繋がりますので、こんな時は慎重に立ち位置そのものを変えることもとても大切です。どちらかと言うと少しずつ、または大きく立ち位置を変えることで、より新しく最適なレーンを見いだそうとするのが良いのではないでしょうか。
魚にレンジを合わせるのは重要なのか?
レンジは、川の流れに対して垂直方向に見た層のことを意味します。ルアーフィッシングでは水面=トップウォーター、表層=サーフェイスレンジ、中層=ミドルレンジ、底=ボトムレンジ、というように使われることの多い言葉です。エサ釣りで言う「タナ」と近い言葉です。さて、渓流魚はその時の状況(コンディション)に応じ、それぞれが好みのレンジを選択していると思います。捕食のしやすさ、水量や水勢や水色などの条件によって、刻々とレンジや目線を変えているのではないでしょうか。もちろん状況によってレンジ攻略の有効性は様々でしょう。バイトに至るレンジの幅が狭くシビアにならざるを得ない時もあれば、さほど気にする必要がないと感じるほど広い時もあります。どんなに丁寧にレンジを刻んでも、バイトに至らないことも多々あります。通常、高活性魚が反応しやすい表層~中層でバイトしない場合、ボトムまでレンジを下げていくことがセオリーとされています。しかし、レンジの選択だけでなく、「そのレンジをどのように使うか」がより重要になります。魚がいるであろうと思われるレンジで、ルアーにどんな演出をさせられるか。ここに渓流ルアーの高いゲーム性があります。